カウンセラー コラム

人生の3分の1からの贈り物~あなただけの睡眠習慣をみつけよう~

2019年2月7日

いよいよ立春、寒さはまだ続きますが、「春眠暁を覚えず」の季節も近いですね。特に起床時間を気にしない休みの日には、「寝るのが幸せ」と言う人が多いかもしれません。

さて、「眠り」、皆さんはどのように意識していらっしゃいますか。

日本は世界有数の不眠大国ともいわれ、睡眠時間6時間未満の人の割合は、男性36.1%、女性42.1%であり、年齢階級別では男女ともに40歳代で最も高く、男性48.5%、女性52.4%に達しています(厚労省:平成29年国民健康・栄養調査)
人間に必要な睡眠時間に個人差はありますが、一般的に6時間未満ではストレス度やいろいろな病気の発症リスクも増加すると言われています。

 

最近よく耳にする「睡眠負債」ですが、「週末の寝だめでは簡単に返せない。40分の睡眠負債を返すのに、毎日14時間睡眠×3週間かかる」という事実*1も出ています。

 

睡眠時間に関する様々な情報のいっぽうで、「睡眠の質」についてはどうでしょうか。
主観的な物差しは、「起床した時の熟眠感あり」かつ「午前中の眠気がない」ことが良い睡眠とのことです。
上記2点をクリアしていないとすると、ぐっすり眠れていない可能性があるかもしれません。また、現代は3人に1人が不眠の悩みを抱えているとも言われています。
*もしも本格的な不眠症で深刻に悩む場合=(よく眠れずに次の日の生活に支障をきたす状態)は、治療が必要な場合がありますので専門医にご相談ください

 

悩みの多くは

  • ・なかなか寝つけない
  • ・眠りが浅くて夜中に何度も目が覚めてしまう
  • ・寝足りないのに早朝目が覚めてしまい、そこから再び眠れない
  • ・長時間眠っているのに、ぐっすり寝た感じがしない 等

おそらく働く皆さんは、仕事以外にも様々な役割やイベントがあり、睡眠時間をしっかり確保するのは難しいこともあるでしょう。そんなときに求めるのは「より質の高い睡眠」です。
つまり「ぐっすり眠る」「深い眠り」はどのようなものか、どのようにしたら得られるのか、の基本を確認していきましょう。

 

「深い眠り」に達するのはいつ?

  • ・最も深い黄金の眠りは「最初の90分間」のノンレム睡眠(※1)にやってくる *1
  • ・最初の4時間以内に「深睡眠」(※2)を2回以上とれるかが、ぐっすり眠るための鍵 *2
つまり、睡眠に一番大切なタイミングは、睡眠時間全体のうち「最初が肝心!」ということです。

 

(※1)眠りには大きく分けて2種類、レム睡眠(脳は起きていて体が眠っている睡眠。REM:Rapid Eye Movementの略で急速眼球運動がみられる)と、ノンレム睡眠(脳も体も眠っている睡眠)があり、90分~120分の1サイクルとして、交互に繰り返しながら眠っている
(※2)ノンレム睡眠は眠りの深さによってステージが分かれ、もっとも深いのが「深睡眠(徐波睡眠とも呼ばれる)」で脳が一番リラックスしている

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皆さんは、ぐっすり眠れた翌朝は、いかがでしょうか。
「スッキリ頭が冴えて、アイディアも浮かぶ」、「集中力が途切れず、思考力がアップ」、「気分がハツラツ、昨日は落ち込んでいたけど、元気になれそう!」などの体験が思い起こされるかと思います。

 

私達がぐっすり眠っている間、脳と体には、どのような働きがなされているのかみていきましょう。

 

◆睡眠にしかできない主なミッション

脳と体に「休息」を与える

自律神経のうち、活動モードの「交感神経優位」が続くと、体と脳は疲弊し、ストレスが溜まっていきます。入眠して深い睡眠の「ノンレム睡眠」に入っていくとき、交感神経の活動が弱まり、リラックスモードの「副交感神経優位」へ、睡眠サイクルとともにスムーズに切り替えられ、脳と体の休息につながります。

 

「記憶を整理して定着」させる

勉強したら寝ることも大事、ということはよく聞きますね。実は深いノンレム睡眠が整うと、レム睡眠も整い、この睡眠サイクルを数セット繰り返すうちに、睡眠全体で「記憶が整理」されます。
レム睡眠中は重要な記憶を固定し、ノンレム睡眠は嫌な記憶や重要でない記憶を消す働きもあるとの報告もあります。

 

「ホルモンバランスを調整」する

「寝る子は育つ」の根拠もここにあるようですが、大人の場合、「成長ホルモン」の分泌は、「肌の修復」、「骨の強化」、「基礎代謝アップ(太りにくくなる)」などありがたいことが沢山。しかも、最初の90分で深く眠ると一晩通じて分泌されるべき成長ホルモンの80%近く確保できるそうです。

 

「免疫力」を上げて病気を遠ざける

免疫細胞がもっとも元気に働くのは副交感神経が優位になっているときと言われます。リラックスしているときや笑っているとき、そして睡眠中ですね。がん予防には免疫力アップが欠かせないでしょう。
また、血管は睡眠中に修復されることから、脳卒中・心疾患などのリスクが減るとされています。

 

「脳の老廃物」をとる

脳には「脳脊髄液」という保護液があり、新しい液に入れ替わる際の老廃物除去が日中だけでは追いつかないそう。なかでもアルツハイマー病の原因:アミロイドβたんぱく質は、覚醒時に脳内で増加し、深睡眠時に排泄が高まるため認知証予防にもつながるそうです。

このように「深い睡眠」は、最高の身体メンテナンス機能だとわかります。

 

逆に良質な睡眠がとれていないと、うつ病の発症要因になる可能性もあるのです。上司の立場にあれば部下に「最近眠れてる?」と聞けることが大切ですし、「仕事の質」へのマネジメントといわれます。

 

こうして睡眠をしっかりと味方につければ、脳と体・心の健康につながっていくのです。お金もかからず、毎日無条件に与えられている贈り物。もし、これまで睡眠を犠牲にしていたり、「眠くなれば寝る」と受け身であったりしても、「睡眠に自らアプローチすることこそ重要」と意識が変わるかもしれません。

 

そこで最後に、自ら睡眠にアプローチするためのポイントをお伝えします。

 

◆ぐっすり眠るスイッチは「体温」と「脳」

この2つのスイッチによって、スムーズに入眠でき、より深く眠れるといいます。自分管理の「睡眠の質アップ」には欠かせない、心強い味方となるでしょう。

 

(1)体温のスイッチ

質の良い睡眠は、深部体温が下がることが欠かせません。なぜなら、起きているとき、温度を上げて体の活動は維持されていますので、睡眠中は温度を下げて、臓器や筋肉、脳を休ませる必要があるわけです。
私達の体温は、「深部体温」と、「皮膚温度」(手足の温度)によって調節されています。起きている時は、「深部体温」と「皮膚体温」の差は最大約2.0℃ですが、入眠する時はこの温度差が縮まるほどに眠気が強まるのです。つまり、この変化を助けることが眠りのスイッチ、たとえば以下が挙げられます。

 

  • 就寝前の入浴
    まず「深部体温を下げる」ために、いったん体温を上げると元に戻ろうと体温が下がっていく性質、そこを活用する方法です。入浴タイミングは、季節やお湯の温度・個人差にもよりますが、40℃のお風呂で15分、就寝90分前が目安とのことです。すぐに寝たい場合は、熱いシャワーでの短時間に替えるなど調整しましょう。
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  • 就寝前の足湯や足裏マッサージ
    今度は逆に「皮膚温度を上げる」ために、表面積が大きく毛細血管が発達している「足」の血行を良くして、熱放散を活発にする方法です。足湯なら寝る直前で良いのです。または、寝る前に3分ほど足の指や足裏をマッサージすることで血行を促すのも効果的です。
    注意点は、靴下や湯たんぽで足を温める場合は寝る前までだけにして、寝る時にはそれらを外して眠れば熱放散が促進されるでしょう。

 

(2)脳のスイッチ

よく眠れる人は、基本的に寝る前は何も考えない=「眠りの天才は頭を使わない」と言います。脳を休息状態に持っていくためにどうすればよいか、様々な研究が始まっているそうですが、普段の生活で鍵となるのは「頭を使わない」、「リラックス」です。主なスイッチをご紹介します。

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    • 単調な状態にする
      脳が考えることをやめて眠くなるには、「単調な状態」にすることを意識します。頭を使わずリラックスできるなら何でもよいでしょう。単調な本を読んだり、音楽を聴いたりするのは良いですが、スマホゲームやメールなどは頭を刺激する危険があると言います。
      また、古くからある「羊を数える」ルーティンですが、「ひつじが一匹、ひつじが二匹、」ではないそうです。ご存知の方も多いと思いますが、正しくは英語で「sheep, sheep, sheep,・・・」。つぶやいてみると、言いやすくて静かな響き、「sleep」と似ているからとの説もあり、100匹目になる頃はとても眠くなりそうですね。

 

  • 入眠儀式
    「いつものパターン」を好む脳の性質を利用することもスイッチになります。アスリートが試合前にルーティンをこなすのと同様、決まった儀式をすることで「無駄なことは考えず」そのままスイッチオフしやすくなるそうです。
    例えば、歯磨きをする→5分ほど簡単なストレッチ→電気を消して横になってから数分ほど呼吸法を行うなど。自分だけの日常の儀式をこなすことで良質な睡眠へ向かうのです。

こうしてみると、睡眠のスイッチを入れる習慣は、自律的に自分と向き合うひとときではないでしょうか。「寝ないで頑張る」時代は終わり、「しっかり寝て頑張る」ステージに上がってみましょう。あなたらしく豊かに生きるための原動力として、人生の3分の1が支えてくれていると思うのです。

 

 

*参考文献
*1 西野精治 著「スタンフォード式 最高の睡眠」 サンマーク出版 2017年2月初版発行
*2 白濱龍太郎 著「誰でも簡単にぐっすり眠れるようになる方法」 (株)アスコム 2017年9月初版発行
裴英洙 著「一流の睡眠 「MBA×コンサルタント」の医師が教える快眠戦略」 ダイヤモンド社 2016年8月初版発行
今枝昌子 著「生活習慣を変えなくても、深い眠りは手に入る」 (株)山と渓谷社 2017年10月初版発行