カウンセラー コラム

上司とのコミュニケーションで困っていませんか? ~アサーションスキル~

2019年5月13日

新年度を迎え、早1ヵ月が過ぎました。新しい職場や人間関係の中で戸惑いながらも、 早く新しい環境に慣れようと努力をされていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。そのような新しい環境の中では、ちょっと言いづらいことを伝えなければならない時、言い方に悩んだり、つい内容を省略してしまったり、遠回しに伝えてしまって正確に意図が伝わっていなかったりということはありませんか?
コミュニケーションの手段が多様化した今日、「伝える=伝達力」は重要なビジネススキルのひとつです。

 

 

ここに、ビジネスパーソンのコミュニケーションの現状としてある調査結果があります。
日本生産性本部の「コミュニケーションに関する意識調査」(2014年)です。

 

このように、ビジネスの世界で自己のコミュニケーションに問題を感じている人が多いことがわかりますが、特に部下の方は7割もの方が自信がないと回答しています。
今からお伝えするアサーション(あるいはアサーティブ)とは、「自分も相手も大切にする自己表現」という意味です。米国で1970年代に注目され現在では世界に広がっています。

 

皆さんは、自分の気持ちや意見を強引に主張して相手に苦い思いをさせたり、言い損なって無力感を味わったりした経験はありませんか。

前者は、相手を大切にしていない「攻撃的(aggressive)」、
後者は、自分を大切にしていない「非主張的(non-assertive)」自己表現のスタイルと呼ばれ、
そのいずれでもない相手も自分も大切にする表現が「アサーション(assertion/assertive)」です。
例えば、次の状況にあったとき、あなたは、以下のA、B、Cのどれに近いコミュニケーションをしているでしょうか。

 

【事例】今日は、前々から予定をしていた大事な約束があるので定時に退社をしようとしていたところ、上司がやってきて、「今、急に、部長から明日の経営会議資料にデータを追加してほしいとの依頼がきたので今日中に作成してくれないか」と頼まれた。

A:「急に言われても無理です」
B:「はい、わかりました」(困ったなどうしよう、友人になんて言おう)
C:「急ぎなのですね。今日は大事な約束が入っています。明日の昼まで待っていただけませんでしょうか。明日の昼までなら間に合わせますのでよろしくお願いします」

A:攻撃的自己表現
一方的に問答無用で「無理だ」と言っています。自分を主張して相手を押さえこみ、その結果、相手を無視することになる言動です。相手の言い分を聞かず一方的に自分の言い分を通そうとする姿勢や態度があります。
巧みにおだてて用事を言いつけ断られないように操作するなども攻撃的表現です。

B:非主張的自己表現
ビジネスの場面ではありがちな対応かもしれません。困ったなと思いながら自分の事情も思いも伝えず相手の要求を受け入れ、上司の指示のままに従っています。こうした対応をすると、その場は収まりますが、その後、友人に申し訳ないという思いと、どう断ろうかと悩むことになるでしょう。上司に事情を伝えて話し合いによって解決できる可能性があるにもかかわらずそれを実行していません

C:アサーションな自己表現
まず、「急ぎなのですね」と相手の状況を受け止めます。次に事情を伝えて、自分ができることを提案し、打開策を探ろうとしています。それが受け入れられれば、自分は責任を果たす意思があることも伝えています。

アサーションでは、自分の気持ちや意見を大切にして率直に、正直に表現してみると同時に相手の言い分や思いも大切に聴こうとします。つまり、「話す」と「聴く」を両立させるコミュニケーションなのです。
そこには、自他尊重の姿勢と態度があり、相手から依頼があった場合は、まずそれを受け止め、わかったことを端的に返し、自分の思いを確かめて伝えてみます。ただし、それで会話が終わるわけではありません。伝えたことに対して相手は何らかの応答をするので、それを聴き、対応する必要があります。
Cのケースでは、大きく二通りの応答がある可能性があります。一つは上司が同意する場合「どうもありがとう」でひと段落するでしょう。もう一つは、上司が「それでは困る」と「今日中にやる必要がある」と合意できない場合。この場合はより良い解決に向け新しい歩み寄りの道を探る必要があります。この両者に可能な妥協案を見つけるプロセスと結果を生み出すことが、まさにアサーションなのです。

アサーションを実行に移すためには、自分の気持ちや意見をはっきりさせること、それを具体的に表現するスキルを身につけること、そして、相手の思いを理解しようと努めることが重要です。
同時に、自分が発言したあとは、相手がそれをどう受け止めたか、思いが伝わったかをフォローし相手の思いに耳を傾けることも必要です。

コミュニケーションとは、そんなやり取りの限りない循環と言えるでしょう。

上記にお伝えした「アサーション」では大切な下記の3つのステップがあり、
「私(I=アイ)を主語として伝えることが大変重要です。

◆アサーションで大切な3つのステップ◆

先程の事例を上記の3つのステップにあてはめて、よりアサーティブな表現にしてみましょう。

【事例】今日は、前々から予定をしていた大事な約束があるので定時で退社をしようとしていたところ、上司がやってきて、「今、急に、部長から明日の経営会議資料にデータを追加してほしいとの依頼がきたので今日中に作成してくれないか」と頼まれた。

皆さんは、このように言われたらいかがでしょうか。
アサーションを使って伝えたとしても、いつも100%理解してもらえるとは限りませんが、
自分の主張を丁寧に柔らかく表現できます。
アサーションでは、ステップ2の「気持ち」の部分がとても重要です。

皆さんは、自分の感情を普段感じていらっしゃいますか?「喜び」「怒り」「悲しみ」「楽しい」など日々意識していらっしゃいますか?ぜひ、普段から気持ちを意識して、周りの人とのコミュニケーションにも感情を表す言葉を使ってみてください。自分の感情に敏感になると生活が豊かになり人生の質も上がると思います。

参考文献:「ビジネスパーソンのためのアサーション入門」/平木 典子・金井 壽宏 著 金剛出版