産業医 コラム

排便習慣~便の基準を知っておき、日々の便の状態を把握しましょう~

2018年8月28日

「快食・快眠・快便」といわれるように、便通は健康のバロメーターです。
今回は排便習慣に関するお話です。

大腸で便ができるまで

大腸には、1日約1.5Lから2Lの液状の消化物が運び込まれます。大腸は、結腸の蠕動(ぜんどう)運動によって直腸へと消化物を運ぶ過程で、消化物から水分を吸収し、適度な固さの便をつくります。

まず、上行結腸では水分が吸収されて液状の消化物が半流動状になります。横行結腸で粥状に、下行結腸で半粥状になり、S状結腸では半固形まで水分が吸収されます。直腸で適度な固さのかたまりとなり、最終的に1日あたり約100~250gの便として排出されます。直腸の便は、約75%が水分で、残り約25%が固形成分です。水分が80%を超えると下痢になります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考:gooヘルスケア 大腸で便ができるまで・便の排出過程
https://health.goo.ne.jp/medical/body/zukan/3/article-9.html

 

便の形状を観察する

便の状態をみれば、ある程度腸の状態を知ることができます。
この基準となるのが、1997年にイギリスのブリストル大学、ヒートン教授らにより発表された「ブリストル便形状スケール」と呼ばれるものです(S. J. Lewis & K. W. Heaton. “Stool Form Scale as a Useful Guide to Intestinal Transit Time.” Scandinavian Journal of Gastroenterology. 1997; 32(9), 920-924)。

便の形状・大きさをもとに7段階に分けられており、医療の場でも広く使用されています。
数字が小さいほど水分量が少なく、タイプ1と2が便秘の硬便、3から5が健常、6と7が下痢の便となります。

 

 

 

 

 

 

 

 

参考:日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会編「慢性便秘症診療ガイドライン2017」
参考(挿入図):「ブリストル便形状スケール」
         (つらい便秘、どう治す?初の「便秘ガイドライン」の気になる中身 日経Gooday)

 

便秘とは

便秘とは、便中の水分が乏しく硬くなる、もしくは便の通り道である腸管が狭くなり排便が困難または排便がまれな状態をいいます。
通常1日1-2回の排便がありますが、2-3日に1回の排便でも排便状態が普通で本人が苦痛を感じない場合は便秘といいません。逆に、毎日排便があっても便が硬くて量が少なく残便感がある場合や、排便に苦痛を感じる場合は便秘といえます。便秘になると便通不良のほか、下腹部不快感・膨満感・悪心・嘔吐などの症状が見られます。 

参考:厚生労働省e-ヘルスネット 便秘と食事

便秘の有症率

厚生労働省の2010年国民生活基礎調査によれば、便秘の有症率は男性2.5%、女性5.1%で、1998年の1.9%、4.7%に比べて増加しています。年齢階層別に見ると有症率は年齢が高くなるほど上昇し、特に高齢者になると急増します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考:日経メディカル特別編集版2014年5月 便秘診療の進め方とポイント
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/special/sped/1405gi/201405/536427.html

便秘の分類

便秘はその原因により、原因がはっきりしている「器質性便秘」と生活習慣やストレスなどが主な原因となる「機能性便秘」に大別されます。
器質性便秘では、結腸がんや直腸がん、イレウスなど腸管の疾病により腸が狭くなるため便秘が起こり、当該疾病の根本的な治療が必要となります。機能性便秘では、不規則な食生活、食物繊維や水分の摂取不足、低栄養、緊張などの精神的要因、便意を我慢する習慣などが原因として挙げられます。

便秘の予防・改善のために

お手洗い食事に関しては、朝食をきちんと毎日取ることや、食物繊維や水分を意識的に摂取することが大切です。食事以外にも適度に運動することで便秘が改善することがあります。また、排便のリズムをつけるために、たとえ便が出なくても朝食後など毎日決まった時間にトイレに座る習慣をつけましょう。

 

過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)とは

過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)とは、大腸および小腸に潰瘍や腫瘍などの器質的異常がないにもかかわらず、下痢・便秘などの便通異常と腹痛・腹部膨満感などの腹部症状を呈する症候群です。
男性では下痢型が多く、女性は便秘型、あるいは下痢と便秘を繰り返す混合型が多く、発症時には何らかのストレスが関わっていることが多いと言われています。

過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群の治療には5本の柱があります。
第1は病態の理解、第2は生活習慣の改善、第3は食事療法、第4は薬物療法、第5は心理療法です。

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考(挿入図):日本消化器病学会ガイドライン(https://www.jsge.or.jp/guideline/disease/ibs_2.html

過敏性腸症候群においては、症状を完全に消失させることは難しく、症状をコントロールするように心がけること、うまくつきあっていくことが大切です。

参考:大腸・肛門の病気について 過敏性腸症候群 日本大腸肛門病学会HP

 

おわりに

便の基準を知っておき日々の便の状態を把握することで、腸の健康状態がわかり健康管理にも役立ちます。