産業医 コラム

腰痛予防~日頃から腰痛予防対策をしましょう~

2018年12月7日

腰痛に悩む人の多さ

腰痛に悩む人が多いことは、国民生活基礎調査 (平成28年度版)にも示されています。
病気やけがなどで何らかの自覚症状をもつ人のうち、腰の痛みを訴える人が男性では1位、女性でも肩こりに次いで2位という結果でした。別の大規模インターネット調査では、4人に1人の方が腰痛で仕事(家事、学業を含む)を休んだ経験を持っています。4日以上連続して休んだ方は10人に1人という調査結果でした。

参考
・厚生労働省 平成28年国民生活基礎調査 (https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/04.pdf
・全国6万5千人を対象とした大規模インターネット調査(Fujii T,Matsudaira K.Eur Spine J,2012)

特異的腰痛とは

医師の診察や画像検査で痛みの原因が特定できる腰痛を「特異的腰痛」といいます。特異的腰痛の代表的なものは、神経痛が主症状の椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症、および骨粗鬆症(こつそしょうしょう)により起こる脊椎の圧迫骨折に伴う腰痛です。また頻度は少ないものの、感染性脊椎炎や癌の転移などによる脊椎腫瘍、解離性大動脈瘤や動脈瘤破裂といった重篤な病気が腰痛の原因になることもあります。尿路結石や生理痛にともなう腰痛も有名です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これらの特異的腰痛は腰痛を理由に受診する人の10%たらずであるとされていますが、下記の表の左のサインが1つでもあれば、原因疾患がある可能性が高いと考えて医療機関を受診しましょう。

参考:認定NPO法人いたみ医学研究情報センターHP(http://www.pain-medres.info/

★特異的腰痛の見逃してはいけないサイン

転倒などの後に痛み出し、日常生活に支障がでる 骨折の可能性
横になってもじっとしていてもうずく 脊椎あるいは脊椎以外の重篤な病気の可能性(圧迫骨折、感染性脊椎炎、脊椎腫瘍、癌の骨転移、多発性骨髄腫、大動脈瘤破裂、尿路結石、子宮内膜症ほか)
鎮痛薬を1ヶ月使っても痛みがとれない
肛門や性器の周囲が熱くなる、しびれる、
尿が出にくい、尿漏れなどの症状がある
椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症による
神経症状の可能性(馬尾症状の可能性)
痛みがお尻から膝下まで広がる 椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症による
神経症状の可能性(神経根症状の可能性)
かかと歩きがしづらいなど、足の脱力がある 椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症による
筋力低下の可能性  *脳や脊髄の病気も疑う

参考:運動器疼痛メディカルリサーチ&マネジメント講座(http://lbp4u.com/youtu/)より一部改変

 

非特異的腰痛とは

残りのおよそ85%の腰痛は様々な検査を受けても原因を特定できないもので、「非特異的腰痛」といわれています。
慢性的な腰痛や再発を繰り返す腰痛のほとんどがこの非特異的腰痛です。いわゆる「ぎっくり腰」も厳密にはどこの組織が傷ついたかを断定することは難しいことが多いため、この非特異的腰痛に入ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

参考:認定NPO法人いたみ医学研究情報センターHP(http://www.pain-medres.info/

非特異的腰痛の予防

腰への日常的機械的ストレス(※)が腰椎の機能不全をもたらし、心理社会的ストレスが心の機能不全を起こし、その両者が相まって慢性腰痛がおこるという考え方が世界的にも標準となってきました。非特異的腰痛の治療と予防はこの考え方から行われます。
(※)機械的ストレス=物理的な力によるストレス刺激(曲げる、押す、叩く、引っ張る、こする 等)

1、機能不全に陥った腰椎の回復
ぎっくり腰のように非特異的腰痛が急激に悪化した場合、痛みに応じて安静にすることは必要ですが、可能なかぎり痛みに応じた活動を維持するほうが再発率を減らすことがわかっています。
安静にすることが体力の低下を起こし、通常の活動ができなくなることが心理社会的ストレスを増大させて症状の慢性化に繋がります。鎮痛剤の長期使用は鎮痛剤依存を起こします。

2、腰椎の機能不全の予防
日頃から、こまめな腰痛予防体操で腰椎の柔軟性をリセットしましょう。
激しい痛みのある時は行わないでください。自分の生活や仕事で腰椎にどんなストレスがかかっているかを知りましょう。座位作業、中腰作業、立位作業のどれが多いのか。また重量物を持ち上げる動作の多い人は、腰への負担を減らすような姿勢(パワーポジション)を意識しましょう。

効果的な体操を習慣づけて、こまめに髄核のずれを戻しておきましょう。

 

■■■■■■■■■■■■■■■腰痛予防に効果的な体操■■■■■■■■■■■■■■■

【前方への軽いずれができたとき】
立ち仕事が多かったり長く歩いたりすると、椎間板の中の髄核が前にずれる
→両方の足を開き、息を吐きながらゆっくり背中を丸め、床を見ながら約3秒間保持する(1~2回)

【後方への軽いずれができたとき】
猫背姿勢や前屈み・持ち上げ動作が多いと、髄核が後ろにずれる
→足を大きく開き、膝を伸ばしたまま上体を、ゆっくり息を吐きながら最大限反らして約3秒間保持する(1~2回)

■■■■■■■■■■■■■腰痛予防に効果的な姿勢の一例■■■■■■■■■■■■■■

【そらすことも屈めることもそれなりにできるが、違和感のあるときは・・・】
左右で「きつい側」を見つける
・足元が滑らない場所で、安定した壁から離れて立つ。
・腕を伸ばして肩の高さで手をつき、腰を横に曲げる。左右行う。
・痛みを伴って曲げにくい側があれば、その方向に、ゆっくりと息を吐きながら徐々に曲げ、痛みをがまんできる範囲までしっかり曲げる。左右差がなくなるまで繰り返す。(最初は1回5秒を5回繰り返してみましょう!)

【ぎっくり腰を予防するパワーポジション】
やや胸を張って膝を適度に曲げる。背中や腰を丸めないことを第一に考えること。

参考:医療と健康の情報誌「こまど」2014年5月号(NO.39)特集3:非特異的腰痛 
http://www.comado.co.jp/No39toku3.pdf
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3、心の機能不全の予防
痛みはストレスにより変化します。どんな時に悪化してどんな時に改善するのかを知ることが大切です。
痛みにとらわれ過ぎて「痛くて〇〇できない」という考えから「痛くても〇〇できるようになる」へと、痛みに対する受け止め方や行動を変えていく(認知行動療法といいます)ことが、痛みの軽減に有用であることがわかっています。自分流ストレス対処術を見つけて、ストレスをためこまないようにしましょう。

おわりに

仕事や人間関係でのトラブルも痛みに大きく影響します。
腰痛だけでなく、背中のはり・筋肉痛・頭痛・めまい・肩こり・耳鳴り・動悸・睡眠障害など、さまざまな症状が現れやすく、複数の症状が重なったら注意が必要です。
整形外科だけでなく心療内科などとの連携治療が有効な場合もあります。